2006年07月15日

放射線照射

 香辛料に対して、その風味を損なわず保存性を高める目的で、放射線照射を利用しようという声が挙がっているとのことである。
 放射線照射は、食品に放射線を照射して殺菌などを行う技術。現在日本では、ジャガイモの芽止めのための使用のみが認められている。かつて食品の保存性が増して、「世界の食糧問題を解決する画期的な技術」などと喧伝されたこともあった。しかし、食品成分に対する未知の影響を恐れる消費者団体等の声もあって、ジャガイモでの利用だけに落ち着き、その後その使用を拡大しようという動きも近頃あまり(国内では)聞いたことがなかった。
 つまり、この問題は既に基本的には歴史上の問題になってしまっていた。だから、GMO問題との比較という意味でも、(私の力でできるとは思えないが)きちんとその過程を検証すべきだろうと考えてきた。実際に、食品の安全性問題の専門家の口から、GMO問題を放射線照射問題になぞらえる表現を聞いたことがある。過去に行われたリスク・コミュニケーションはどのように行われた(行われなかった)のか。その際のリスク認知はどのようなものであったか。どのような利害関心が、当時の技術の使用あるいは不使用を正当化したのか。そういったことには非常に興味がある。例えば、「原子力技術の平和的、多目的利用」といった観点もあったであろう。(現在であれば、(スパイスだけならあまり意味がないかもしれないが)「地産地消」という考え方に逆行するという見方もあろう。)
 そもそも今回のことだって、提案は原子力委員会で話し合われて出てきたものである。国民の健康と安全に責任があるはずの厚生労働省が、今後どのように対応していくのかが問われる。科学的な観点に基づいて、再びリスクとベネフィットを考え直しても良いのではないかという発想が出てくるのは自然なことである。しかし、それが国民の安全性向上という観点から出てきている様子がない(つまり実際に消費者にとって現在何か困った問題があって、それを解決しようとして出てきているのではないように見える)ので、社会的受容は難しいのではないかという直観がどうしても働いてしまう。
 原子力委員会食品放射線部会のサイト
 http://aec.jst.go.jp/jicst/NC/senmon/syokuhin/index.htm
 保坂展人氏のブログ(質問書と答弁書の内容が掲載されており有益)。
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/80dc72e625a319d5f7ac52974339337d
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/498380389256210d12bacff64aa910dd

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Comment on "放射線照射"

この新聞記事を見て、「00年に出された要望書がなぜ、昨年暮れから検討されたの?」という疑問がまず浮かびました。このごろ、「少しくらいの放射線は大丈夫。」と宣伝している原子力業界のPAの一環かと勘ぐってしまいました。放射能・放射線については、誤解が多いのも事実だと思います。放射線影響について、調べたこと、調べていない(あるいは、調べたくても現実には調べられない)ことを社会に伝えることを、専門家の方には、お願いしたいと思います。「たとえ安全でも、食べ物をこれ以上いじらないで」というのが実感です。上のメロンも10年後には、照射されるのでしょうか?

  •   ミドリ
  • 2006年07月18日 11:02

まずは、林先生にお礼を申し上げます。保坂氏のブログをご紹介いただき、ありがとうございました。先のコメントを書いた後に、氏のブログを読んで、びっくりしました。05年10月原子力委員会が「食品に放射線をあてることを推進する方針を決めた」とは知りませんでした。これで、朝日の記事の「00年と昨年」の謎が解けました。ネットで毎日の記事を調べたら、そのことに触れていたので、「毎日に替えようかなぁ」と思いました。お礼まで。

  •   ミドリ
  • 2006年07月18日 12:57

書き込みありがとうございます。
「調べていない(あるいは、調べたくても現実には調べられない)こと」については、しばしば伝える意味がないこととされており、見逃されているところだと思います。
「これ以上いじらないで」という気持ちも、なかなか伝わりにくいものだというのを実感しています。「食」について、文化や感覚といった次元があるという認識が大切なのではないかと思っています。これからも、とりたての茨城のメロンが食べられたら良いのですが。

  •   はやし
  • 2006年07月19日 07:21

食品照射専門部会のHPもなかなか興味深いものでした。現状認識として「・・・「食品照射」は、・・・社会への技術情報の提供や理解活動の不足等のために活用が十分進められていない・・・」とありましたが、「等」の中に、「データ改竄をしてきた原子力産業への不信感」や「各種研究におけるデータねつ造による科学者集団への不信感」があることを、もっと重く受け止めて欲しいと思いました。「ご意見への対応」は「科学的な根拠に基づき」議論すれば、「相互理解」が得られるという考え方で書かれているように感じましたが、「本当に知りたいことは、実験もデータ収集も不可能」「生物は予期せぬ変化をするから現在の情報では安心できない(例BSE)」という人とは、かみ合わないように思いました。林先生が書かれていたように、欲求のないことを理屈で説得しようとしても難しいと思いました。小さな記事として見過ごすところを、いろいろと考えさせていただき、ありがとうございました。

  •   ミドリ
  • 2006年07月19日 15:26

林先生
「食のコミュニケーション円卓会議」は,まさに食品への「放射線照射」について学び,どこにも日和らず,できる限り科学的データにもとづいて客観的に見ることのできるものさしをつくろうとしています.
私自身もジャガイモに関わる仕事をしていたことがあるので,自分自身で「放射線照射」について時代背景からデータまで俯瞰して,どう判断すればよいのか,先入観抜きで捉えなおしてみたいと思っています.

Tachibanaさん、
 コメントありがとうございます。ぜひやってみて下さい。期待してます。
 ところで、身近な大学生に聞いてみたところ、ジャガイモの放射線照射についてはほとんど知らないようでした。芽に何かあるらしい程度のことはぼんやり知っていました。こういう場合、科学的理解が必要なのか、それとも日常的にリスクを避けうる振る舞いさえあれば十分なのか考えさせられます。
 あと、コメントが二重になっているので、一つ消しますね。
 では、また。

  •   はやし
  • 2006年09月16日 15:36

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